エッチなおはなし
エロは地球を救う!モーツァルトのような無垢なエロを書きたい・・・
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奈緒の冒険・なにわアクション編 1
私が、韓国人留学生のヨン・ドンギュンと付き合い始めたのは、留学仲間だった里美ちゃんに誘われた合コンがきっかけだった。
ニックネームはドン。彼は留学生とは言いながら、父親が外交官なので日本での生活も長く、日本語には堪能。
出会ったのは、里美ちゃんに誘われて行った六本木のクラブだった。
オーストラリア留学で一緒だった里美ちゃんは、向こうで日本人留学生キラーのプレイボーイにバージンを捧げて以来、うぶな女子高生が一気にエッチ開眼。
帰国後は主に白人の男の子を専門に追い掛け回し、おとなしそうな顔に似合わぬ行動力で、すでに六本木あたりでは有名人になっていたらしい。
帰国からしばらく経った頃から、里美ちゃんから合コンに誘われ始め、面倒くさくてずっと放置していたのだけど、ついに断り切れずに一度だけのつもりで出掛けてきたのだ。もっとも、この日は合コンではなく、お友だちを紹介したいからと言うことだったが。
地下鉄六本木駅のコンコースで待ち合わせた私たちは、留学以来久しぶりの再開となる。
「奈緒ちゃ~ん」
小柄で目鼻立ちのちんまりした、雛人形みたいな顔立ちの里美ちゃんに、派手なメイクにキラキラアクセサリー、マイクロミニが似合っているのか、いないのか。
でも、さすが高三にして六本木界隈で鳴らすだけあって、立ち居振る舞いに妙な慣れというか風格があったりする。
まあ私は、(よく、そんな格好で、大宮くんだりから出掛けて来られるわね)と、内心呆れていたのだけど。
里美ちゃんに連れて行かれたクラブは、テレビ朝日近くに建つ小じんまりした雑居ビルの中に、2フロアぶち抜きで作られていて、店内は外から想像するよりゆったりと広々した構造になっていた。
暗い店内に暖色系のスポット。天井には控えめなミラーボールが廻って、音楽も意外なほど静かなもので、全体的にシックなクラブだった。
客のほとんどが外国人の若者で、日本人は女の子がちらほらいるくらい。
戸惑う私をよそに、里美ちゃんは次々と外国人たちと挨拶を交わしたりハグしあったり。
そして、一人の長身白人男性を見つけて駆け寄ると、ぶら下がるように抱き合ってキスを始めた。
『はは~ん。この男が里美ちゃんの彼氏か。自慢したかったのね』
もともと義理で一回だけの付き合いと決めていたし、見栄っ張りな里美ちゃんの性格もわかっていたので別に腹も立たないけど。
「奈緒ちゃん、お友達のマーク。カナダ人なの」
誇らしげに里美ちゃんに紹介され、マークと呼ばれた、いかにも軽そうな金髪のイケメンボーイと握手する。
「Nice to meet you .I am Mark. 」
「Nice to meet you.I am Nao.」
さすがに里美ちゃんは顔が広く、その後、私を一通りの男の子に紹介してくれたけど、どうやらこの店の公用語は英語のようだ。
そして、店内にたむろする他の日本人の女の子と、里美ちゃんとの最大の差は語学力。日本人向けにスローな英語などしゃべる気なんてさらさら無い外国人たちのスラング混じりの英語にも、里美ちゃんは必死に喰らい付いていた。かなり勉強しているのだろう。
もちろん、オーストラリア留学で揉まれた私だって、ある程度の会話には参加出来るけど、なんだかバカらしくなって、言葉がわからないフリをして黙っていた。
(なんだか私ったら浮いてる?)
そうは思っても、身振り手振りの割りに内容の乏しい周囲の会話がとても楽しいとは思えず、ぼんやりオレンジジュースをすすっていると、同じように手持ち無沙汰そうな男と、目が合ってしまった。
(日本人かしら?店内に日本人の男の子は一人も見かけなかったけど)
たぶん、日本人の男の子には、この店は敷居が高いのだろう。そんなことを考えていたら、その男が、さっさと近づいてきて、
「こんばんは」
と、やけに爽やかな笑顔で挨拶してきた。
おっ!日本語。でも、ちょっと発音が変かも。
「あっ、僕は韓国人です。大阪大学に留学しています。今日はアメリカ人の友達に誘われてきたんだけど、みんなの英語についていけなくて」
なるほど、たしかに韓国人っぽい日本語だけど、なかなかに流暢。留学生と名乗るからには在日韓国人ではなく、本国の人間なのだろう。
身長は175センチぐらいだろうか?痩せているけど筋肉質で均整のとれた肉体。でも、私の目を釘づけにさせたのは、その端正な顔立ちだった。
スタイリッシュショートのヘアに、絵に書いたような小顔で甘いマスク。でも、たしかに同年代の日本の男には無い、ギラッとした何かを持っている気がする。
(コイツ…油断できないかも)
私は内心、身構えた。
(つづく)
2011.08.06 Sat
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奈緒の冒険・なにわアクション編
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奈緒の冒険・なにわアクション編 2
私は韓国人に対して、ちょっとした偏見を持っている。
別に国籍差別するつもりはないけれど、オーストラリア留学時にトラブルがあったのだ。
留学先のハイスクールのホームルームの時間、いきなり一人の韓国人女子留学生が立ち上がると、過去、日本が朝鮮半島に対して、いかにひどい仕打ちをしたかを、延々とクラスのみんなに訴え始めた。
クラスには私を含めて4人の日本人留学生がいたけど、ただポカンと聞くしかなかった。
そう言えば中学時代、日本が朝鮮半島を統治していて、ずいぶんとひどいことをしたと、授業で習った記憶はあるけど、だいたい韓国なんて国には興味も愛着も無かったのだ。
イ・アジュンと言う名のその女の子は、気持ちが激して来たのか、やがて涙ながらの大演説となり、白人の生徒たちは、こういうことには慣れているのか、ニヤニヤしながら、イ・アジュンと私たち日本人を交互に眺めていた。
年端もいかない少女をセックス奴隷として刈りたてたり、若者を日本本土へ強制連行して過酷な労働を課したり、名前すら奪われて人間扱いされないまま、多くの同胞が命を失っていったとか…。
演説はクライマックスに達し、イ・アジュンは、私たちの方を指差して、この場で謝罪することを求めたのだった。
他の日本人たちは青ざめてただ凍りついていたけれど、私はどうも胡散臭いものを感じていた。
興奮したイ・アジュンの口調が、中学時代に日本軍の蛮行を熱っぽく語った教師と同じ印象だと思った。私たちは、その教師の泡を飛ばしながら興奮してしゃべる姿が可笑しくって、つい笑ってしまったけど、なにやらその時の不思議な違和感を思い出した。
「Wait only on the first! (一日だけ待て!)」
私は立ち上がって、イ・アジュンを睨みながら叫ぶと、彼女は不適な笑みを浮かべながら、『一日ではなにも変わりはしないけど、待ってやってもいい』と、のたもうた。
その夜、私は徹夜でインターネットを駆使して情報を集めた。
ネットにはありとあらゆる情報が洪水のように溢れていて、日本語で『従軍慰安婦』と検索するだけで、140万件ものヒットがあった。
情報が錯綜して、頭が変になりそうだったけど、私は日本と日本人に有利な情報だけをピックアップし、ノートに書き込んで行く。
本来なら、両方の言い分を併記して、一つづつ比較検討を進めて行くのが筋だとは思うけど、圧倒的に時間が足りなかった。
とりあえず私は、あの高慢な女に頭を下げるのはゴメンだと、それだけを念頭に情報を集めまくった。
翌日、数学の授業を担当教師に許可を得て、私とイ・アジュンのディベートのために時間を取ってもらい、クラスメイトの前で対決することになった。
こういう、いい加減というか大らかなところは、いかにもオーストラリア的なのかもしれない。
勝敗は…よくわからない。
もとより他の3人の日本人の加勢は期待していなかったが、韓国人もイ・アジュン一人。まさしく一騎打ちだ。
イ・アジュンは、日本の仕打ちを非人道的な悪魔の所業と決め付けたけど、私は、付け焼き刃の知識ながら、日本の韓国統治は、当時の列強の植民地政策と比較しても基本的に善政であり、その時のインフラや教育が、その後の韓国の躍進に大きく貢献したと主張した。
また、いわゆる従軍慰安婦問題や強制連行に関しては、誤解に基づく部分も多く、基本的には日韓基本条約で解決済みとの日本側の主張を展開。慰安婦問題に関しては、残念ながら当時は売春は合法だったし、日本人の慰安婦もたくさんいたこと。ましてや日本兵が少女を拉致して慰安婦にするなどあり得ないこと。日本へ強制的に連行された朝鮮人は、戦後全員帰国させていて、むしろ朝鮮戦争からの難民たちが、強制連行を自称したのでは…みたいな内容で攻め込んだ。
当然イ・アジュンは激昂し、私たちは激しい論戦を繰り広げたが、しょせん高校生レベルの論争だし、しかも母国語ではない英語での応酬だからおのずと限界がある。決着が着くはずも無いのだ。疲労の色濃い消耗戦に区切りを付けたのは、意外やクラスメイトのオーストラリア人、ウイルの提案だった。
(つづく)
2011.08.07 Sun
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奈緒の冒険・なにわアクション編
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奈緒の冒険・なにわアクション編 3
ウイルは、先に書いた里美ちゃんの処女を奪った日本人大好きバカ男で、私とはいろいろと確執があったのだけど、この時は、私にとって割りと好意的な仲介をしてくれたと思う。
「そんな難しい問題を、僕らに聞かされても決着は付かないよ。放課後にでも、二人仲良く心行くまで討論すればいいんじゃね?」
イ・アジュンはウイルを睨み付け、私は軽く肩をすくめた。
「それに、僕は何人もの日本人を知っているけと、羊みたいにおとなしい彼らが、とてもそんな大それたことが出来るとは思えないんだよね」
クラスに失笑が湧き、二人いる日本人の男子も迎合するように笑った。
「OK、みんながこの話題に辟易しているのはわかったわ。放課後にリさんと討論する時間ももったいないし、興味のある人は、自分で調べて欲しいわね」
すでに知識が尽き果てていた私は、内心ホッとして仲介を受け入れたが、イ・アジュンは興奮冷めやらず、いきなり、『日本の兵隊に逆さ吊りにされた韓国人慰安婦が、生きたまま腹を裂かれて殺されたのよ!』と、叫び、クラスに小さな悲鳴が起きたけど、教師が『この討論はここまで』と、締めくくってしまった。
あまりにも荒唐無稽な話を持ち出したイ・アジュンは墓穴を掘ってしまったようだ。
授業の後、ウイルがニヤニヤしながら近付いてきた。
「ナオはやっぱりタダ者じゃないね。日本の男は腑抜けが多いけど、女はなかなかなもんだ。去年は、泣きながら韓国人に謝った日本人がいたけど」
「日本の高校生は圧倒的に近代の歴史の知識が乏しいのよ。男の子がどうとか言うより、教育の問題ね」
「なるほど…で、どう?今夜、僕と付き合わない?」
「アホと付き合う時間は無い」
「…アホって言うな!」
その後も、イ・アジュンは執拗に私に絡んで来たけれど、私は取り合わなかった。私たちの主張の糸を、たとえ銀河系まで伸ばしたとしても永遠に交わりはしない。それが日本人と韓国人の宿命だと思うようになったのは、その時からだった。
だから、ヨン・ドンギュンにも、初めはいい印象を持てなかったのだ。
まあ、そんな警戒感はあったけれど、さしあたり会話する相手もいなかったので、しばらく話しを続けることにした。とりあえず、日本語で話せるしね。
「僕の名前はヨン・ドンギュンです」
「ヨン?ヨン様?」
「アハハ、日本人は、すぐそう呼ぶけど、ペ・ヨンジュのヨンは名前、僕のヨンは名字。だからドンって呼んでくれた方が嬉しいですね。漢字だと廉東均と書きます」
ドンはそう言って携帯のメモ欄を開き、名前を書いて見せた。
「なるほどドンね。ドン・ファンのドン。ドン・ビトー・コルレオーネのドン。覚えやすいわ。私はナオ。木ノ内奈緒です」
「ナオちゃん。可愛い名前ですね。ナオちゃんもあまりこういう場所には慣れてない?」
「ナオでいいよ。今日は友達にしつこく誘われてきてみたけど、思った通り、つまんないとこだわ」
「おお!ストレートですね。僕もなんだか落ち着きません。ここはガイジンの中でも、お金持ちばかりが集まるお店のようです」
「そうなんだ。だけどドン、敬語は止めてよ。私よりずっと年上でしょ?私は高3だけど」
「あ、はい。僕は22歳です。でも、敬語しか教わってないので。ゴメンナサイ」
しばらくドンと話すうちに、すっかりリラックスしてしまった。
そして、ドンの父親が東京駐在の外交官なので、彼自身は大学のある大阪と東京を行ったり来たりしていることを知った。
こいつこそ、お金持ちの坊っちゃんだと思うけど、他のガイジンのように、傲慢だったり粗暴なところが無いので、けっこうリラックスして会話をすることが出来た。
しばらくして、里美ちゃんが呼びにきた。
「奈緒ちゃん、みんなでVIPルームに行こうって」
ちょっとうんざりって感じだったけど、せっかくお招きいただいたんだし、ここはお付き合いっていうものだろう。仕方ないわね。
(つづく)
2011.08.08 Mon
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奈緒の冒険・なにわアクション編
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奈緒の冒険・なにわアクション編 4
「ドンも一緒にいいでしょ?」
里美ちゃんに聞くと、ハンサムなドンの風貌に、一瞬オヤッ?って顔をした後、
「あんたも来る?」
と、ぞんざいに言った。
たぶんアジア系だというだけで、里美ちゃんのストライクゾーンからは外れてしまうのだろう。
「あっ、僕はいいです」
と、辞退するドンに、私が、
「いいから、おいで」
と、アゴをしゃくって見せたので、ドンはちょっと驚いた表情だったけど、結局ついて来たのだった。
VIPルームとかいう部屋は、狭い空間に革張りソファと小型のガラステーブルがいくつか置かれていて、なにやら狭苦しい。むしろ一般スペースの方が快適じゃないかと思うくらいだ。
座る場所を里美ちゃんに指示され、ドンとは離されてしまった。
店内より、さらに照明が落とされた室内には、7、8人の男女がいて、私の横には、大柄な白人の男の子が座って、訛りのある英語で、しきりに話し掛けて来る。
さっき里美ちゃんに紹介された、たしか…ディックだっけ?変なヒゲを生やしているけど、たぶん私と同じくらいの年齢のはずだ。いかにも軽薄なタイプで、うんざりした私が首を伸ばすと、里美ちゃんが、にっこり笑って聖母のような表情でうなづいた。
(おいおい、バカ里美は、この熊みたいな男を私とくっつけようとしてるの?まったく冗談じゃないわよ)
ディックが肩に手を回してくるのを邪険に振り払った頃から、ルーム内の雰囲気が険悪になったような気がする。白人男をぞんざいに扱うことは、どうやら失礼なことになってしまうらしい。まあ、あからさまに嫌悪感を表に出していたからね。
「奈緒ちゃん!もっとリラックスしてよ。なんかお酒でも飲めば?」
里美ちゃんが、場を繕おうとしたら、ひとりのアメリカ男が、
「このレディに、クジラのステーキを」
と思わせぶりに言ったので、周囲から明らかな嘲笑が沸き起こった。
(やれやれ)
どうやらここでは、オーストラリアでも経験した白豪主義が幅を利かせているみたいだ。
「国の食文化について、外国人からとやかく言われたくはないわね」
私としたら、出来るだけ穏やかに言ったつもりだったけど、すぐにアメリカ人が食い付いてきて、
「軍国主義を叩きつぶし、日本に民主主義を教えてたやったのはアメリカ」
とか、言い出した。おお!懐かしきジョージ・ブッシュⅡ世の迷言。私がディックを袖にしたのが、彼らの自尊心を傷付けたのかもしれない。
かなり険悪な雰囲気になってしまったけど、どうやら私に味方はいない。
里美ちゃんが『奈緒ちゃん…』と、袖を引っ張るけど、こいつは戦力外。
「あら、日本が戦ったからこそ、アジア諸国が欧米から独立出来たって言う人もいるわ」
私の言葉に、すかさず反論して来たのはオーストラリア人の女の子。
「なにバカなこと言ってるの?世界中に迷惑をかけたくせに」
「…知ってる?連合軍の日本占領中、一番タチが悪くてレイプ事件を多発させたのはオーストラリア兵だったってこと」
オーストラリアでのイ・アジュンとの論戦以来、こう見えても、けっこういろいろ調べているのだ。
色めき立つオージーガールを制したのは、リーダー格って感じのアメリカ人だった。
「まあまあ。ところで君はどう思うんだい?戦争中の日本の行いについては」
と、隅で静かに聞いていたヨン・ドンギュンに話を振った。
内心、面倒なことになったと思った。反日的で被害者意識の強い韓国人に参戦されたらやっかいだ。
もちろん反論は出来るけど、アジア人同士の論争を、回りで白人どもがニヤニヤ眺めている図というのも、イ・アジュンとの論争の時と同じ状況で、かなりムカつく。
ところが、ドンの答えは意外なものだった。
(つづく)
2011.08.09 Tue
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奈緒の冒険・なにわアクション編
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奈緒の冒険・なにわアクション編 5
「もちろん、日本に併合された歴史は韓国人にとって屈辱だよ。でも昔、パク・チョンヒ大統領が、『日本に併合されたことはファーストベストではないが、セカンドベストではあった』って言ってるんだ。僕もその意見にはある程度賛成。白人国家に支配されていたら、韓国人は人間扱いされなかっただろうし、現在の韓国の発展は無かったでしょうね」
訥々とした語り口で、言葉を選んだドンの英語に、外国人たちは耳を疑ったようだが、やがて例のアメリカ人が、
「ほほう。君は韓国人には珍しく、植民地根性に浸ってるみたいだな」
と、挑発した。でもドンは、軽く肩をすくめるだけ。
「なに?ここはコロニーなの?あんたたちをホワイトマスターって呼ばなきゃいけないの?」
私の声に、ドンに集まっていた視線が再び私に戻ってきたけど、その時、ヨン・ドンギュンがぽつんと、
「ホワイトマスター、ブラックハート」
と、つぶやいたものだから、白人たちの目つきがさらに鋭くなった。
(マジでケンカになったらシャレにならない!)
私は席を蹴って立ち上がると、
「ドン、行きましょ!こんなヤツらと一緒にいたって、ロクなことないわ!」
と、日本語で叫び、ドンの手を取って、足音を怒らせながらVIPルームを出たのだった。外国人たちの嘲笑に送られながら。
そのまま、ドンと手をつないだままお店を出たのだけど、クラブの料金はどうなるのかしら?まっ、いいか。
「まったく頭に来るわねえ。ホント、カッコだけのノータリンどもだわ」
「…外国人すべてがそうじゃないけど、欧米人に、ああいうタイプがいるのもたしかですね。でも、あなたはすごいです」
「そう?あんたこそ、日本人の味方とかしたら、国で公開処刑されるんじゃない?」
「おいおい…僕は韓国人であって北朝鮮じゃない。っていうか、あなたこそひどい差別発言です」
私たちは歩みを止め、路上で顔を見合わせ、そして笑い合った。
「あれ?あなたのお友達ですよ」
ドンが指差す方を見ると、里美ちゃんと彼氏のカナダ人マークが、私たちに向かって小走りに駈けてきていた。
「奈緒ちゃ~ん」
「里美ちゃん…ゴメンね。せっかく誘ってもらったのに、パーティーをメチャクチャにしちゃった」
息を切らせて近づいて来た里美ちゃんにとりあえず謝ったけど、里美ちゃんは意外にも、
「ううん、それはいいの。で、マークがあなたたちに一言謝りたいって」
と、後についてきたマークを促した。
ちょっと気弱なハンサムボーイって感じのマークが、
「僕の友達が失礼なことを言ってゴメンナサイ。あんなこと言うなんてシンジラレナイ」
と、私とドンに向かって言った。
ふむふむ、なかなかイイヤツじゃないか。里美ちゃんの彼氏として合格点をあげよう。
「ううん、私こそゴメン。それより里美ちゃん、これからやりにくくなるんじゃない?」
「もういいの。そろそろ六本木も卒業と思ってたから。それより、これからマークの部屋に行って飲み直さない?」
「僕の家、ここからすぐだから、タクシーで行きましょう」
マークと里美ちゃんの提案に私とドンは顔を見合わせた。
「どうする?ドン」
「うーん、僕が行ってもいいのでしょうか?」
「もちろんよ。奈緒ちゃんを助けてくれたし」
さっきまでのぞんざいさに比べ、里美ちゃんのドンに対する好感度は、あきらかにアップしたみたいだ。
「じゃあドン、お邪魔しようか」
「そうですね」
「そういえば、ドンもお友だちと来てたんじゃないの?」
「ああ、さっきのアメリカ人の彼ですよ。さほど親しいわけでもないし、かまいません」
こうして私たち4人は、タクシーでマーク宅へと向かうことになった。
(つづく)
2011.08.10 Wed
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