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『私、こんど親と一緒に京都に行くんだけど…会ってみる?』
私は思い切って綾人君に誘いを掛けてみた。ブロ友は、あくまで電脳空間だけの付き合いであって、実際に会うことなんてないと決めつけていた私だったけど、アヤト君だけは何か特別な存在のような気がしていた。
なのにアヤトの反応ははっきりしなかった。
『会ってもうまく話が出来るかなあ?』とか、『夜空ちゃんを失望させそう』とか、なぜか煮え切らない。
誘いを掛けた手前、私は焦った。というよりイライラしてきた。
『なに?もしかしてアヤトはキモオタデブ?それとも私のことを性格ブスと見抜いてるってわけ?』
とか、辛辣な文字をキーボードに打ち込む。
『いやいや…夜空ちゃんは素敵な女子に決まってるし、僕だってイケメンってワケじゃないけど中の上レベルだとは自負してるよ』
『中の上…Aマイナスぐらい?だったらいいじゃない。一度だけ会いましょうよ。一回こっきり。人生でただ一度だけの邂逅よ。お互い気に入らなければ5分でサヨナラしましょ!』
『…過激だなあ(^o^;わかりました。会いましょう。待ち合わせ場所とかは地元の僕が考えとく。いつ来るんだっけ?』
『え~とねえ…』
こうして私とアヤトのご対面が決まった。見知らぬ場所で見知らぬ男と会うのは、なんとなく不安ではあったけど、アヤト君なら大丈夫って高をくくりもしていた。もし生理的に合わない人間だったら、たしかにお茶一杯でサヨナラすればいい。それで怒るアヤトでもないだろうし、たぶん、そんなことにはならない気がした。かくして、土曜日の正午、私たちは阪急四条河原町駅前で待ち合わせることになったのだった。

会うことを決めてから、私たちは携帯アドレスを教えあってメールで連絡を取るようになっていた。
『すぐにわかるかなあ?』
『夜空ちゃんの名前にちなんで、【はがない】のコミックスを胸に抱えて行くよ』
『それってバカっぽくない?』
そんなことを事前にメールし合ってから、私は四条河原町駅のコンコースの雑踏をウロウロしていた。すると…清水寺が写された大きなポスターの前で、右手に携帯、左手に『僕は友達が少ない』(略称:はがない)のコミックス第1巻を、表紙が見えやすいように掲げた少年を発見。同時に、その少年とばっちり目が合ってしまった。
「!」
「…」
私は少なからず驚いた。アヤトは、すっきりとした顔立ちの、一応イケメンと呼んでもいいくらいのルックスだったけど、なにより若かった。いや若すぎだろ!
驚きで、とっさには笑顔が浮かばず、私は少し眉間にシワを寄せながら(私の悪い癖)アヤトとおぼしき少年の方に歩み寄ると、少年は、おびえるように立ち尽くして、じっと私を見ていた。
「アヤト君?」
「…そう」
声変わり途中みたいな線の細い声が返ってきた。
「いくつ?」
「14歳…中二です」
私は深いため息をついた。
(つづく)

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2012.11.30 Fri l 母と私とおじさんと+1 l コメント (4) l top