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そう、旦那さんたちもまた、年に一度の無礼講に心を燃やしていたのです。
だからこそ、乱れたお祭り期間も終わってしまえば再び元の穏やかな地方都市の生活に戻って行く。夫婦の間に『はだか祭り』の話題が上ることもなく、何事も無かったように静かな日常が復活するのです。
今でこそ避妊の技術も発達したものの、そういう知識の無い時代、お祭りで身籠ってしまう人妻も多かったようですが、そんな時でも男たちは生まれて来た子どもを自分の子どもとして育てたとか。鷹揚で大らかな土地柄なのでしょう。
閑話休題。

さて、僕の母と慎二を暖かく見送った後、お座敷では何事も無かったかのように宴会が続きました。あまり詮索しないのが礼儀なのかもしれません。
でも、僕はそうはいかない。広間で一人、気もそぞろで居ても立ってもいられなくなり、『ちょっとトイレ…』と、誰にともなくつぶやくと、その場を立ったのでした。
母たちがどこに向かったかは、ある程度想像がつきます。僕たちが寝泊まりする離れの部屋に向かったに違いないのです。
一応トイレに立ち寄ってから、僕は膝が震えそうな緊張感の中、離れの部屋へと向かいました。
誰かに見られたら困ると言う気持ちの他に、自分たちの部屋に戻るのだから、いくらでも言い訳が出来るという小賢しい計算もありました。
裏庭を抜けて、やがて離れの部屋に到達。ガラス扉は閉じられていましたが、最近改修したらしく、そっと引き戸を引くとスルスルと音も無く開きました。
エアコンの室外機がゴーゴーと音を立て、母屋からは宴会の騒ぎがさざ波のように流れてきます。
僕が足音を忍ばせて玄関に入ると、目の前が昔ながらの障子戸になっていて、その向こう側が毎晩僕らが眠る座敷です。
そして沓脱ぎには、男物と女物の下駄が、仲良く揃えられていました。
天井の灯りが消されていることが障子戸を通してわかりましたが、枕元に置いてあるはずの小型の行灯型のスタンドは灯されているようです。
この障子は雪見障子と言うらしいのですが、ちょうど大人の腰の高さの部分が素通しのガラスになっていて、僕は沓脱ぎから膝をにじらせると、音を立てないよう気を付けながら体を乗り出し、顔を雪見障子のガラスの部分に近付けました。
僕の目に入って来た光景は…
薄暗いオレンジ色のスタンドの灯りを弾くように、生き物が蠢いていました。その物体が人間の背中だと気付くのに、少し時間は掛かりましたが、気付いてしまえば前後運動をする日焼けした肌が、慎二の背中だとすぐにわかった。
そして、その慎二のお尻に割られた白い両脚こそが母のものだということもすぐに理解しました。
「…!」
僕は極度の緊張で、胸が苦しいほどでしたが、この状況を見届けざるを得ず、目を見開いて室内を凝視していました。
やがて、慎二の汗に光る背中に、母の白い両腕がからまると、まるで爪を立てるように掻き抱いたのです。
「…ああ!」
母の苦しげな声を聞き、僕はめまいがしそうになりましたが、視線は貼りついたように二人の絡み合いから外すことが出来ません。
(つづく)


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2012.03.30 Fri l はだか祭り l コメント (2) l top