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第3セットが始まっても前田はベンチを暖めていたが、それでも攻撃力が落ちないのがレッドエスパーダの凄いところ。むしろまとまりが良くなり、守備力はアップする。
祐実を中心に懸命に戦い、追い縋ったアルタイルだったが、やはりリーグナンバーワンチームの底力には抗しがたく、徐々に引き離されてしまう。
「あきらめるな!ベストを尽くせ!」
祐実の叱咤激励も虚しく、第3第4セットを連取され、ついにアルタイルはセットカウント1ー3で敗れて痛い痛い黒星を喫したのだった。

アルタイルメンバーは天を仰いだが、そんな痛みを感じる暇も無く、試合後のネットを挟んでの両チーム選手の握手では一触即発、きっと一悶着あるだろうと観客も、そしてマスコミも固唾を呑んで注目していた。
そして予想通り、口火を切ったのはレッドエスパーダの前田だった。
「おい岩村!忘れるなよ」
と、岩村に対して凄み、それを聞いた岩村が、
「はっ?なんのことだっけ?もう忘れたわ」
と、おちょくった。
「…てめえ、殺す!」
すかさずエリナがフォローする。
「岩村さん、前田さんはケンカ強そうですよ。だってオチンチンがあるって噂だから」
それを聞いた会場がドッと沸き、耳をそばだてるマスコミも失笑した。まさか清純派のエリナの口から『オチンチン』なる単語が飛び出すとは。呆気にとられた前田の表情が再び怒りで赤黒くなり、岩村が追い打ちを掛ける。
「おお、そうか!さしずめオスゴジラだな。あっ!怒って口から火を吹くぞ」
「テメー!」
岩村に殴りかかろうとした前田を両チーム5、6人で懸命に制止し、観客たちは悲鳴を上げたり喜んだり。やんやの盛り上がりだ。
だが、意外にも祐実がチームメイトの岩村とエリナを叱った。
「岩村!エリナ!お前ら前田に謝れ!」
不意を突かれた二人も、暴れる前田もまた動きを止めた。それほど全日本キャプテン祐実の存在は大きい。
岩村とエリナは顔を見合せるとバツの悪そうな顔で前田に近付いた。
「前田、ゴメン。悪かったよ。まあ試合は終わったことだし仲直りしようぜ」
と、まず岩村が手を差し出した。
いまだに鼻息荒い前田だったが、祐実に『勘弁してやってくれ』と言われ、さらに小橋カナに『ほら、握手しろ』と促されてしぶしぶ岩村の手を握った。
「イテテ!この馬鹿力!」
「…なんか言った?」
「…イヤ」
続いてエリナが手を差し伸べたが、すでにエリナの表情は反省からか泣きそうになっていた。
「前田さん、すみませんでした。いけないのは私なんです。明日は正々堂々と戦わせてください」
そんなエリナに、前田もちょっと恥ずかしくなったのか、
「い、いいよ別に…」
と仏頂面ながらも手を握った。エリナの表情がパッと輝き、爽やかさの中にほんの少し謝罪の感情を添えた笑顔を前田に送ると、強面前田もまた頬を染めたのだった。
会場は大きな拍手に包まれ、無数のシャッターが切られた。
(つづく)

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2011.01.31 Mon l 泣き虫エリナ l コメント (2) トラックバック (0) l top