エッチなおはなし
エロは地球を救う!モーツァルトのような無垢なエロを書きたい・・・
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優雅で退屈な休暇 11
僕は、そっと葉子の体を仰向けに横たわらせると、上から優しくキスをした。
右手で髪を撫で、乳房を愛撫し、そして両脚を開かせると、その間に腰を入れて行く。
まずはペニスの位置を調節し、先端が温かな葉子の性器に当たるのを確認してから、グイッと腰を進める。
葉子との付き合いもすでに15年。月に2度性交を行ったとして年間24回。15年だと360回。若い頃には会えば2度交わったし、もう少し頻繁に会っている実感があるから、通算で400回から450回ほどセックスしている計算になる。
ちょっとした夫婦並だが、だからこそ葉子の体は知り尽くしていて、アバウトに腰を進めても、ツルンと葉子の中に収めることが出来た。
亀頭の部分が葉子の両開きの扉を押しあけ、弾力に富んだ襞襞を押し分けながら、一気に根元まで挿入してしまう。豊潤な蜜の世界。
「ああ…」
微かなうめき声を上げた葉子の体を、上からしっかり抱いて静止。目を閉じて、温かくて気持ちのよい葉子の体内をじっくりと味わう。愛液に潤んだ内部は、快適な温度と湿度、そして潤滑性。そして葉子の性器は、絶妙な締まり具合で、僕のペニスを把握しては緩める蠕動運動を繰り返す。
実感するのは僕と葉子の相性の良さで、ペニスとヴァギナが、まるであらかじめ寸法を測ったかのようにピタッと密着するのだ。
でも、実際には始めからぴったりだったわけではなく、何十回も何百回もファックを繰り返すことで、徐々にフィットしてきたのだと思う。
女性は、愛する男の精液を無駄なく受け入れて漏らさないために、無意識のうちにその男のペニスの形状に合わせた性器を形づくるという。本能的に惚れた男の子どもを産みたがるのだろう。
そんな話をテレビで聞いた時、僕は葉子が旦那さんとセックスレスだと言ったことを信じることが出来た。明らかに葉子の性器は、僕のペニスを基準にしていたから。僕らの相性は、性器の面から見てもやはり抜群なのだ。
僕は、まぶたを開き、薄暗闇の中、葉子に微かに笑い掛けると、葉子はちょっと照れたようにいやいやをし、そしてキスをねだった。ビジネスでは歯に衣を着せぬ直球勝負の葉子だったけど、僕と抱き合う時は、いつもはにかんでいる。
僕は唇を合わせたまま、ゆっくりと腰を動かし始めた。ゆっくりとゆっくりと、歩くようなテンポで(アンダンテ)。
ペニスを、葉子の性器のやや上側、クリトリスに近い部分を擦るように出し入れすると、葉子はより感じるみたいで、明らかに呼吸を乱す。
もっとも僕らの性交は、秋に鳴く鈴虫のように静かなもので、あまり声は漏らさず、二人で荒い呼吸音だけを繰り返しながらまぐわう。
葉子の背中が布団に擦れる音、湿った性器の接触によって生じる水音、口を吸い合う音、葉子が下から僕の頭髪に手を入れてかきむしる音、そして、たまに発音される、葉子の『ああ…』、『あっ!』という控えめなあえぎ声。
僕はと言えば、ほぼ無言。もともと口下手で無口な僕は、愛の語らいなど苦手なのだ。似合わないことはしない方がいい。
だから僕らのセックスは、とても抑圧されたもので、たとえば僕が子供のころに密かに聞いた両親のセックスの時の、母のこらえきれないうめき声に較べたらなんとも慎ましいものだった。
そして、僕はそんな葉子とのストイックとでも呼べそうなセックスが大好きだった。
傍から見れば(見られても困るが)、ホントに気持ちがいいのかハッキリわからないかもしれないけど、僕たちはとても気持ちよく、まぐわっているのだ。声を出せばいいってもんじゃない。
僕の数少ないセックス体験の中で、学生時代に1個下の後輩とセックスしたことがあったけど、その時、純情可憐なその子が、僕が挿入を果たすや、『イク!イク!』と、アパート中に響くような声を上げて、鼻白んだ経験がある。
それに較べたら、葉子のあえぎは、なんとも上品で、知的で、そして性的にも充分そそるものだった。僕のペニスはさらに固くなり、葉子はお尻に垂れるほどに濡らした。
僕は、ストレートだけでなく、葉子の右を突き、左を突き、上側をえぐり、腰を浮かせて下側すら刺激した。そして円運動。
広げられた葉子の両脚は、僕の突きに合わせて宙をさまよい、やがて僕のお尻の上で組み合わされ、再び音を立てて布団の上に落とされた。
この日、僕がコンドームを装着しなかったのは、葉子が『今日は大丈夫だから』と、言ってくれたから。僕は、こういうあたり、まったく葉子にお任せで、付けろと言われれば付けたし、大丈夫と言われれば、そのまま生で挿入した。
そして、なんと言っても、セックスは生が気持ちいい。
(つづく)
2011.06.20 Mon
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優雅で退屈な休暇
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優雅で退屈な休暇 12
僕がピストン運動を徐々に早めていくと、葉子のあえぎも高まり、僕の背中に回した手をせわしなく動かして、そして爪を立てる。
二人の腰使いがピタッと合って、熟練のセッションが繰り広げられた。僕の軽いアドリブにも、難なく付き合ってくれる葉子。
もっとも、僕に過激なアドリブは似合わない。一人が突出するより全体のハーモニーを大切にしたいのだ。そういう意味では、音楽とセックスは似ているのかもしれない。
「ああ…」
否が応にも高まる性感。でも、フィニッシュはまだまだ先だ。
僕は、葉子の右足を持つと、挿入を維持したまま体をずらせ、葉子の体と90度の角度で接する体位を取った。
いわゆ松葉崩し。男女とも比較的楽な姿勢で、僕は空いた右手で、葉子の乳房やクリトリスを優しく愛撫することが出来る。
さらに葉子を90度転回させれば、横臥状態での後背位となる。男が体を立てる本格的な後背位に比べて、体ははるかに楽だから、中高年向きの体位と言えるかもしれない。
僕は後ろから葉子の乳房を探りながら腰を繰り出して、ペニスの抽送を繰り返し、二人の肉があたる音が、旅館の部屋に響いた。
ただし、葉子はバックが苦手だ。『おしっこがしたくなる』と言うのがその理由だから、後方からの突きが膀胱を刺激するのかもしれない。僕としては、後ろからの攻撃を無理にでも続けて、葉子の体が最後にはどう変化するのか見届けたい気持ちもあるのだが、前にも書いたように、葉子の嫌がることは一つとしてしたくないので、早々に体位を変えることにした。
それに、もともと後背位は、僕らにとってつなぎの姿勢でしかないのだ。
次なる体位、女性上位の姿勢を取るべく、一度結合を解いた僕が布団に横たわると、葉子が結ばれるより先に、下半身に顔を寄せて来た。
僕らの間では恒例となっている中間フェラ(僕命名:セカンドフェラ)だ。
これはかなり気持ちがいいのでお勧めする。その日、最初のフェラも感動だけど、一度ファックを楽しんだペニスは、おそらく神経が磨ぎ澄まされているのだろう。葉子の口粘膜に激しく反応して、僕は身悶えた。
でも、葉子の愛液にまみれたペニスって、いったいどんな味がするのだろう?
一度聞いてみたところ、『私の味がする』って答えたっけ。なるほど的確な表現だ。
セカンドフェラはごく短めに切り上げ、ほどなく葉子が僕の上に馬乗りになって指でペニスをつまむと、中腰になったまま、先端で自分自身を愛撫し始めた。バイブになった気分だけど、もちろん僕だって柔らかな泉に触れて気持ちいいに決まってる。
やがて、葉子はゆっくりと腰を沈め、ペニスはズブズブと根元まで埋没を果たした。
「ああ~」
葉子がアゴを上げて、長い長いため息をついた。
基本的に、葉子は上から交わることを好むが、このあたりは、物事を何でも自分のペースで進めたがる葉子の性格を反映している。
上になった時の葉子はアグレッシブで、小刻みで浅い上下運動を続けたかと思うと、円運動へと移り、突如としてペニスが抜けるぐらいのダイナミックなピストン運動を始めたりする。
上体の動きも慌ただしく、反り返って僕の両膝に後ろ手を突き、アゴを上げながら悶えたかと思えば、足の裏を布団に付け、しゃがみこむようにして豪快に大きな腰を使ったりする。
そうかと思えば、いきなりガバッと上から抱きついて来て、キスをしながら体を妖しく揺する。
まさしく変幻自在で、僕にいろんな種類の快感を与えてくれるのだった。
それでも、最後はいつもオーソドックスな騎乗位で終わるのだが、その時こそ、僕がジョーカーを切る時だった。
乳首噛みだ。
(つづく)
2011.06.21 Tue
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優雅で退屈な休暇
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優雅で退屈な休暇 13
女性上位で結ばれたまま、僕が少しだけ上体を起こして、下から葉子の乳房に顔を寄せていくと、葉子も心得たもので、腰の動きを止めて胸を突き出すようにする。
僕は、まず葉子の右乳首を口に含むと、チュッと吸い、おもむろに唾液で湿らせてから歯を立てていく。始めはほんの軽く、触れるか触れないかのフェザータッチで。このスタートがけっこう大切。ソロッと静かにゲートから馬を出す。それがやがて、強烈な末脚へと繋がるのだ。
もちろん左乳首も放っておかずに、右手の指で転がすように愛撫するのは言うまでもない。
超微風的な僕の乳首噛みに、葉子がさっそく焦れ始めた。
「ねえ…もっと」
それに応えて、ほんの少しだけ微妙に歯に力を入れると、堪え切れずに葉子が、『ああ~…』と、感に迫ったうめき声を上げた。
これからが本番、じっくりと時間を掛けた乳首噛みが繰り広げられる。
僕は、乳首の根元付近に歯を立てて柔らかく噛むと、ちょっとだけ場所を先端側に移しながら同じ強さで噛んであげる。付け根から先っぽまで1㎝にも満たない乳首の長さを、だいたい10等分にして輪切りにするように歯を立てて歩くのだ。
僕はこの歯による愛撫を、密かに『CTスキャン』と名付けていた。
出来る限りギリギリの弱い力で噛むことからスタートし、そして葉子の反応を探りながら、徐々に噛む力を強めていく。
葉子は乳首を噛まれながら、『もっと…もっと強く!』と、上体を揺らして身悶えし、僕はそのリクエストにお応えする形で、ほんの少しづつ歯に力を込めていくのだ。
「あ、ああ~ん、もっと~!」
葉子がいやいやをしたが、その時、性器に包まれた僕のペニスに、熱いシャワーがジョワッって感じで浴びせ掛けられた。感じているのだ。
「ねえ、もっと強く!…お願い」
僕は、再び乳首の付け根に歯を戻すと、先ほどより、また微妙に力を込めて噛み上げる。音楽用語で言うクレッシェンド(だんだん強く)。強弱のギアは10段階ぐらい用意してあるので、ここでは決して先を急いではいけない。
この頃になると、歯にもけっこうな力が込められていて、僕なら悲鳴を上げるほどの強さになっているかもしれない。
でも葉子は気持ちいいらしく、その乳首は通常時の倍ほどに膨れあがり、そしてコリコリに固くなっている。
葉子は、乳首を噛まれながら首を振り、その美しい表情を歪めて、自慢のサラサラヘアーを左右に揺らしながら悶えるのだった。
僕はさらに歯先に力を込めながら、慎重にCTスキャンを続けた。
そして、葉子が自ら体を反らせていくと、やがてその引っ張る力に耐えられなくなった僕の歯から、パチンと音を立てて弾けるように乳首が離れる。
「あ、ああ~!」
葉子の歓喜の声を聞きながら、僕の口は再び勃起した乳首へと戻る。
僕は、噛み残しが無いよう、いろんな角度から乳首に歯を立て、細かく歯形を付けていった。
その頃になると、僕の舌は、なにやら血液のような鉄臭い味を感知していたが、さりとて出血しているわけではない。もしかしたら、興奮した葉子の乳首から、母乳に似た成分が分泌されているのではないだろうか?と、思ったりもするけど、詳しいことはわからない(わかる人がいたら教えて!)。
ここまで来たら、僕のCTスキャンもいよいよ大詰めだ。力を込めすぎて、葉子の大切な乳首に傷を付けてはいけないからね。
でも、葉子はもう一個乳首を持っている。僕の唇は、今度は葉子の左の乳首に寄せられた。
「ああ…」
葉子が新たなうめき声を上げる。
男の性感帯はペニスに集中しているけど、女は全身に持つ。少なくとも葉子の二つの乳首は、僕のペニス並に感じるみたいで、うらやましい限り。いや、うらやましいだけではなく、その敏感なさくらんぼを責める歓び、これもまた男冥利に尽きることなのかもしれない。
そして、左右の乳首を存分に噛み噛み愛撫でいじめ、葉子の性感が最高に高まった頃を見計らって、僕たちの性交はいよいよクライマックスへと向かう。
(つづく)
2011.06.23 Thu
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優雅で退屈な休暇
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優雅で退屈な休暇 14
僕は、下から葉子の腰を支えながら、素早くて力強い抽送を繰り出し、葉子もそれに応えて上から腰を使う。リズムがピタッと合うところが、二人の相性の良さを物語る。
「ああ、いいわ!」
単なる擬音だけではなく、気持ちよさを言葉に出すようになったのが、葉子の進歩。セックスをしても、あえぐだけだった葉子が、『いいわ』の一言を口にするのに、10年ぐらい掛かっているはずだ。
激しく体が触れ合う音と、熱い息遣い。僕はすでに臨界点を意識し、いつだってイクことの出来る状態だった。
さらに葉子の腰使いが早まって、このまま僕を天国に誘い込もうという勢いだったけど、僕はあえてそれに抵抗を見せた。
「上になる」
葉子のお尻を抱えて動きを封じると、一度ペニスを抜いて体を入れ替える。葉子はちょっと不満そうだったけど、素直に体を開いたまま仰向けになり、僕は、ついでにバスタオルを葉子のお尻の下に敷いてやる。
これは葉子の愛液や僕の精液でシーツを汚すのを防ぐためだが、葉子は、おむつ交換の赤ちゃんみたいに、従順に股間をさらしたままお尻を上げた。
再び僕が上になって葉子を上から抱いたのだが、葉子の体はすでにドロドロの状態。
「ああ、いい!気持ちいい!」
葉子が驚くほど大きな声を上げる。僕は、ペニス全体を使ったストロークの大きなピストン運動を繰り出して、自ら快感に揺れながらタイミングを見計らっていたが、いよいよ爆発の兆候を自覚して、最後の儀式に取り掛かった。
「葉子!いい?気持ちいい?」
「ああ、いいわ!気持ちいいの」
このあたりのやり取りは最近のお約束。ここで満を持した一言を浴びせ掛ける。
「どこ?どこがいいの?」
「ああ!…おまんこ!おまんこがいいの!」
期待通りの答えを返してくれた。清楚でセレブな奥様を絵に書いたような葉子が発した卑猥な言葉に、僕の前頭葉が激しく反応。
「うわ~!葉子!」
「ああ!あなた!」
こうして僕らは、壮絶なラストシーンへと突入し、僕は溜めに溜めた大量の射精を葉子の中に浴びせかけ、葉子はそれを受けて意味不明な叫びを上げ、そして激しく震えた。
葉子は余韻に浸りながらも、ペニスを入れられたまま下からエッチに腰を使い、僕が力なくそれに応じると、『はい、もう一回』と、ふざけて笑った。
若い頃でも、さすがに抜かないまま二回戦に突入した経験は無い(実際出来る人がいるのだろうか?)。
僕も笑いながら、『もう、許して』と謝り、枕元のティッシュケースから二人分となる数枚を抜き取り、そして柔らかで温かな葉子の体から降りたのだった。
「ああ…」
ツルンとペニスが抜けた瞬間、葉子がうめいた。
葉子がシャワーに立ち、僕は裸で寝るわけにもいかないので、ノロノロと体を起こして下着と浴衣を身に付け、再び布団の上に横たわった。
40歳を過ぎると、さすがに射精後の疲れを実感するようになる。一方浴室からは、シャワーの音とともに葉子の鼻歌が聞こえてくる。
(女は年を取るほどに元気になる)
思わず実感してしまうが、弱音ばかりも吐いていられない。この後、葉子とはどれくらい付き合っていられるのだろうか?10年?20年?それとももっと?
僕としては、どちらかが死ぬまで、こうやって微温湯的な関係を続けたいと思っていたけど、葉子はどう思っているのだろう?
彼女に愛想を尽かされないためにもセックスを頑張らなくっちゃ!
そのためには、普段からぶらぶらしていてはダメだ。旅行から戻ったら体を鍛えよう。水泳とかジョギングとか…
そんなことを考えていると、葉子がきちんと浴衣を着込んで戻ってきた。
僕たちは、小さな布団で一緒に眠ったりしない。リアリストである葉子は、狭いところでは熟睡できないと、旅先でも一人でさっさと眠ってしまうのだ。
(つづく)
2011.06.24 Fri
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優雅で退屈な休暇 15
この時も、葉子は迷うことなく自分の布団に入ってしまった。もう少し、甘えてほしい気もするのだけど…
家でも旦那さんとは別室と言うけど、ホントかな?
「ねえ、明日はどこに連れていってくれるのかしら?」
スケジュールについては何度も説明していたのに、葉子の頭には入っていないようだ。まるで僕はツアコン扱い。
「明日は日本海に出て、北陸道を北上して、長岡の桜を見る予定。で、泊まりは越後湯沢」
「そうだっけ?私、もう一回、今夜見た高田城の桜を見てみたいわ。夜と昼で、満開の桜がどんな感じで変わるのか確かめてみたいの」
「うん、いいよ。朝一番に寄ってみよう」
「ありがとう。テレビ見る?」
「いや、もう眠りたい」
「そうね。じゃあ、おやすみなさい」
「おやすみ」
僕たちは布団から右手を出して握手を交わし、そして眠りの態勢に入っていった。
射精直後に眠ってしまうと、翌日まで疲れを持ち越すので、しばらく時間を置いた方がいいと言う。軽い体操なんかが効果的らしいけど、セックスの後に体操で体をほぐすカップルなんているのだろうか?
どのみち僕は、もう睡魔に勝てそうになかった。
こうして僕は、お布団のお舟にシーツの帆を張って、眠りの国の住人になる。
旅行二日目。質量ともに豪華な朝食に圧倒されながらも二人ともきちんと完食。普段はトーストとコーヒーぐらいしか入らないのに、旅先では朝から大食漢になる。
4月とは言え、山里の朝は肌寒かったが、国道を北上して海に近付くに連れ暖かくなっていく気がする。
朝の高田城公園は、昨夜の妖艶な表情からは打って変わって、なにやらお疲れの風情だった。
艶やかな夜の蝶が、化粧も落とさずに疲れて眠ってしまったような…
もちろんそれは僕の偏見でしかなく、桜はほぼ満開の状態を維持して咲き乱れ、僕は元気一杯の葉子に引っ張られるように、無数の花びらを付けた桜の樹を縫うように歩き回った。
高田城を1時間ほど散策してから、北陸道に乗って北上。左手には一面の日本海だ。
「日本海って思ったより明るい色をしているのね。もっと暗い海のイメージを持っていたわ」
途中、米山サービスエリアから海を見下ろしながら葉子が言った。
「太平洋側の方が黒潮って言うぐらいだから黒いよね。海流とか水深の影響もあるんだろうけど、たしかに明るいブルーだ。冬、雪が降れば、また違った表情を見せるのかもしれない」
「雪の日本海も見てみたいな。なんかロマンチック」
僕は苦笑した。
「ハンパなく雪が降るよ。車の運転に自信が無い」
「大丈夫よ。私が運転してあげるから」
葉子が悪戯っぽい目で僕の顔を覗き込み、僕は肩をすくめた。葉子の運転は完全舗装された都会の道路ですら危なっかしいというのに。
やがて道路は関越道に入り、長岡市街に入ったのはお昼過ぎ。昼食は名物のへぎ蕎麦をいただく。
でも、お目当ての悠久山公園の桜は、意外や二分咲き程度。満開で一面の桜並木を勝手に想像してきた僕らは肩透かしを食らわされた格好だ。高田城公園とはエライ違い…
「ねえ、ちゃんと調べたの?」
葉子が、仕事の時の厳しい目で僕を追及する。
「う、うん。同じ新潟県で、こんなに違うとは思わなかった…」
「…しょうがないわねえ」
とりあえず、許してくれたみたいでよかった。
僕らは仕方なく、ほとんど蕾のままの桜並木の間を歩き回ったけど、それはそれでまた趣きがある。
春と呼ぶには、いささか冷たい風に吹かれて、いつの間にか僕らは手をつなぎ、体を寄せ合っての散策を楽しんでいた。
(つづく)
2011.06.25 Sat
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