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1週間は風のように過ぎ去り、期待と不安の入り混じった木曜日が巡って来ました。
その日の朝、私は何気ない顔で夫を送り出すと、丁寧にシャワーを浴び、大げさになりすぎない程度のおしゃれを決めて家を出ました。途中、デパートで食材を吟味して買い込むと、参宮橋の柴田君のマンションへ、いそいそと向かったのです。
もちろん自分の行動に疑問が無かったわけではありません。人妻が昼間っから独身男性の部屋を訪れようとしているのです。たとえ何も無かったにしても世間の常識から外れていることに違いは無いでしょう。しかも、私は結婚してわずか2年。今でも夫のことを深く愛しているのですから。
でも、すでに私は柴田君に会いたい欲望に勝てないことをよく自覚していました。この1週間、私はジレンマに悩みながらも心はルンルン気分だったのですから。
(約束通り柴田君にお昼ご飯を作ってあげるだけ。世間から誤解されるようなことには絶好にならない。せいぜいキスまでだわ)
私は一人頷きながら参宮橋の駅に降り立ちました。

あたたかな笑顔で出迎えてくれた柴田君は、Vネックのセーターをカジュアルに着こなして、いかにも大人の男という感じ。相変わらず非の打ち所が無いぐらいにカッコイイのです。
さっそくキッチンを借りて柴田君のために作ったのは、ペペロンチーノとチーズをふんだんに使ったサラダ、それにあっさりしたスープ。あらかじめ自宅で焼いてきたフォカッチャ。
あまり手の込んだ食事だと時間がかかるし、彼も気を使うかもしれないので、シンプルなメニューにまとめてみました。でも味にはちょっと自信ありです。
やがてキッチンの小さなテーブルに向かい合わせて、二人でささやな昼食を取ることになりました。
「驚いたな。こんな短時間で、こんなに美味しい料理が出来あがるなんて」
目を丸くして舌鼓を打ってくれる柴田君。さすが女心をよくわかっています。
「主婦やってると手抜き料理が得意になるのよ」
私は照れ隠しにそう答えました。

二人で食事を楽しみ、食後は彼が淹れてくれたエスプレッソを飲みながら談笑。そして場所をリビングのソファに移し、改めてシャンパンで乾杯しました。前回と同じように、私たちは二人掛けのソファに並んで座っていた。
「とっても美味しかった。ありがとう」
柴田君は、私の肩をそっと抱き寄せ、ごく自然に唇を近づけてきました。
(いけない…)
と、思ったのは、主人を裏切ってしまう罪の意識ではなく、食後まだ歯を磨いていなかったから。まあ、それはお互いさまだから、結局受け入れてしまいましたけど。
(キ、キスまでなら…)
あくまでも優しいご挨拶キスだし、ここまでは想定内ですからね。
(でもキスまでよ朋子。出来ることなら二度目のキスは拒否した方がいいわね)
そんな私の決意など、牛車に立ち向かうカマキリのごとく儚いものでした。柴田君が唇を離して、私の瞳を覗き込みながら『可愛いよ…』などとささやきながら2度目のキスを求められば、案の定、拒否れません。むしろ自分の方から唇を差し出したぐらい。そうなれば3度目が来るのは必然で、結局、3度目で舌を差し入れられてしまった。
柴田君との初めてのディープキス。ディープなのに激しくならない魔法のキッス。否応なしに官能を高められた私は、いつの間にやら自分の方から積極的に舌をからめていたりして…ちょっぴりペペロンチーノの味がした。
(ウ…ウフン…キスまでよ。キスまでだわ。絶対キスまでよ朋子!)
まあ、その決意も砂で作った器のように、じきに崩れてしまうことになるのですが。
(つづく)


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2012.08.27 Mon l 浮気の効能 l コメント (6) l top