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エリナは、3月半ばからアルタイルバレーボールクラブの練習に参加したが、正式入社前にもかかわらずアルタイルグループの会社案内の表紙に自分の写真が掲載されたりして、そんなことにも強いプレッシャーとストレスを感じるようになっていた。
それでも期待に応えようと、先輩たちに気を遣いながら練習に励み、徐々に実業団のバレーにも慣れ始めた7月には、Vリーグ・サマーシリーズが始まる。
このシリーズには一線級の選手は参加しないものの、若手にとっては12月から始まるVリーグ公式戦に向かう重要なステップであり、貴重な経験の場となる。
暗黙のうちにレギュラーでの先発出場が義務付けられたエリナは、さっそく超高校級の噂に恥じない活躍を見せて、オーナー以下関係者を喜ばせた。
気の早いファンやマスコミは、冬のプレミアリーグ出場どころか、全日本デビューがいつになるかをさかんに話題にした。誰もがスーパースターの誕生を信じて疑わなかったのだ。
ところが、人生はそう絵に書いたようには進まない。
片桐絵梨菜が突如リタイアしたのは、サマーシリーズ開幕からしばらく経った頃のことだった。

『泣き虫エリナ戦線離脱!』。
マスコミが大きく取り上げた離脱の原因は、腰、及び膝の故障だった。
バレーボール選手は元々が大柄な上に、試合では思い切りジャンプして、敵のブロックをかいくぐるために不自然な腰の回転でスパイクを打つ。そして着地の際には体重の何倍もの衝撃が膝を襲う。
そんな練習を日に何十回となく繰り返すのだから、いわば腰と膝の故障はバレー選手の職業病。過去、幾多の才能がその故障によって消えていった。
『泣き虫エリナ』も、その業病から逃れることは出来ず、サマーシリーズ遠征先から緊急帰京すると治療に専念することになった。
ただ、バレーが出来なくなったことで、エリナの心の中の何かが切れてしまったかもしれない。
当初はバレーの練習こそ休んだものの、アルタイル本社での勤務は続けていたのだが、やがてそれも休みがちになり、ついには自宅療養を名目に引きこもってしまったのだ。
これにはバレー部監督以下が慌てて自宅に駈け付けたが、エリナの反応は煮え切らず、やがて面談すらも嫌がる事態になっていた。
そのうち、ある週刊誌がどこからかエリナの故障箇所のMRI画像を入手し、それをあらためて専門医に診断させるという記事を掲載した。
その記事によれば、『たしかに腰と膝に故障はあるものの、多くのバレー選手に見られる程度の軽微なもので、バレーが出来ないほどの重篤なものとは思えない』ということだった。
この記事により、エリナの戦線離脱はケガというよりサボタージュ、それも精神的なストレスが原因との憶測がなされ、チーム内のイジメが指摘されるなど、しばらくマスコミを騒がせた。
アルタイル・バレーボールクラブ監督の菊地は、青くなって菅原オーナーの元に報告に出向いたが、菅原は苦虫を噛み潰しながらも、『まさか首に縄を付けて引っ張り出すわけにもいかないだろう』と、突き放した言い方をした。
菅原はその頃、イタリアに渡ったスーパースター藤永祐実の獲得に熱中していたのだった。

Vリーグ開幕を控えた10月、『熱血ユミちゃん』こと藤永祐実がアルタイル入団を発表。
片桐絵梨菜の存在は徐々に忘れられつつあった。
だが、この二つの才能は、あたかも巨大な惑星同士がお互いの引力に引きつけられるように、やがて運命的な出会いを果たすことになる。
(つづく)

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2010.12.01 Wed l 泣き虫エリナ l コメント (2) トラックバック (0) l top

コメント

身体が……
デカイのに神経の細い奴がいるんだよねぇ。
冗談じゃなくスマイルさんがエリナに祐美をどう絡ませるかか楽しみ(笑)。
2010.12.02 Thu l 私の碇で沈みなさいっ!. URL l 編集
私の碇でさんへ(^-^)
スポーツの世界も、プロ的になると、生半可な心じゃ乗り切れないのかもしれません。
ユミの熱血指導で、エリナ復活なるか?
2010.12.03 Fri l スマイルジャック. URL l 編集

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