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それでも久しぶりの旅行で、僕はずいぶんとのんびりた気分に浸ることが出来た。
働いている頃は、旅行に出ても取引先からガンガン電話が入ったりして、旅に集中できなかったからね。
そして今回の旅行では、葉子も車の助手席で、とてもリラックスしているように見えた。
ちなみにデートの時は、どんなに長時間運転になったとしても、ハンドルは僕一人で握ることにしている。葉子も運転免許は持っているけれど…僕は決して臆病者ではないと自負しているものの、葉子の運転の助手席に座るのだけは怖かった。

思えば初めて二人で泊まり掛けで行ったのは、冬の京都だったけど、その時は葉子が緊張のあまり、体調を崩してしまったっけ。葉子にとっては初めての浮気旅行で、強烈なストレスを受けていたらしい。今思えば、笑い話になるぐらい初心だったのだ。その頃に比べたら、二人ともずいぶんと図太くなった。
旅の初日は、八王子インターから中央道に乗り、桃の花でピンク色に染まった山梨県を通過し、松本インターで降りて、東京より10日ほど遅れて桜が満開になった松本城を訪れた。
お城には桜がよく似合う。
僕らは手をつなぎ合って、のんびりとお堀端を歩き、青空の下、雪に覆われた日本アルプスをバックに黒くそびえる天守閣を眺めた。
「今回はなんて言って出てきたの?」
「ん?もちろん仕事よ。長野県の会社と大きな取引が出来るチャンスだって」
「ふ~ん。旦那さんは疑ったりしないのかな?」
「全然大丈夫。もっとも、今週は旦那も学会でどっか泊まりがけで出掛けるって言ってたけど」
あまりにも無防備な葉子のことが、なんとなく不安に感じられたけど、せっかくの旅なのだからあまり深くは考えないことにした。

城内にあるお蕎麦屋さんで名物の辛味蕎麦を食べ、葉子は小布施堂でさっそくお土産を買い込み、この日の宿の新潟県赤倉温泉に向かった。
日本海に程近いが、山あいにある静かな温泉町だ。
山桜が彩る夕暮れの山並みを眺めながら露天風呂に浸かり、早めの夕食を取る。
食事は大広間にしつらえられたテーブルに座って頂くのだが、僕としては部屋食よりもこの方が落ち着く。
僕らはワインリストから、ボルドーのジスクールを選んで乾杯した。
「自由の世界に解き放たれた、あなたに乾杯」
「葉子の会社が一部上場出来ますように!」
グラスを当てて、僕らは微笑み合う。周りから見れば、僕たちは夫婦以外の何物にも見えなかっただろう。
多少、葉子が美人過ぎてバランスを崩しているかもしれないけど、15年の歴史は長くて深い。馴れ親しんだ空気が僕らの間に漂っているはずだ。
男と女は体を合わせた回数で親しみを増し、和合する。僕らの周りのテーブルにいるカップルたち(ほとんどが中年から老人のカップル)も、それぞれに仲のいい夫婦にしか見えなかったけれど、それぞれに事情を抱えているのかもしれない。
もちろん、そんなことを詮索しても意味は無い。人の恋路を邪魔するやつは、馬にでも蹴られて死ねばいいのだ。僕は、新鮮な馬刺しを一切れ口に入れながら、そんなことを思った。
葉子はすでに食事に夢中で、料理を一口食べては通りがかった仲居さんを呼び止めて調理法を聞いたりしていた。
「こんど作ってあげようか?」
僕は曖昧に笑っておいた。
葉子が料理が苦手なことは、よく知っていたから。

食後、オプショナルツアーで高田城の夜桜見物に出掛ける。
マイクロバスで国道18号線を日本海方面に向かって約40分、黒々とした森と、水を張った蓮根畑に囲まれたある一角だけが、まるで別次元からワープしてきた宇宙基地みたいに光り輝いていた。
日本三大夜桜で名高い高田公園だ。
「うわ~、キレイ!」
バスを降りてすぐ、葉子が歓声を上げた。
満開のソメイヨシノのピンクと、無数の照明が織りなす花と光のページェント…って、まるで観光ポスターみたいな感想しか思い浮かばなかったけど、やはり僕も夜桜ライトアップの光景に圧倒された。

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2011.06.14 Tue l 優雅で退屈な休暇 l コメント (2) l top

コメント

温泉かぁ
新潟あたりの温泉には一度行ってみたいですねぇ。
スマイルジャックさんは温泉に詳しい方なんですか?。
2011.06.15 Wed l 私の碇で沈みなさいっ!. URL l 編集
私の碇でさんへ^^
さすがに新潟方面はあまり知らないのですが、信州あたりなら何度か行ってますね。
僕の最高のリフレッシュです^^
2011.06.16 Thu l スマイルジャック. URL l 編集

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