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詩織さんが、夫の昌明さんから、昌明さんの弟のマコト君の同居を相談されたのは、マコト君が大学合格が決まってすぐのことでした。
旦那さんの弟、つまり詩織さんから見ればマコト君は『義弟』ってことになります。
昌明さんは、一応相談という形は取っていたけれど、詩織さんにとっては、ほぼ決定事項を通告されたって感じでしょうか?
それでも旦那さんは、
「1年だけだからさ」
と、人のいい愛想笑いを浮かべて、一応は奥さんに気を使ってるみたいです。
もちろん詩織さんに断るすべはありません。
「じゃあ1年間、東京に慣れるまでの間、お世話させていただくわ」
と、『1年間』をなにげに強調したのですが、そのあたりの微妙なニュアンスが旦那さんに伝わったかどうか…
昌明さんは比較的鷹揚な性格、思い切って言ってしまえばけっこう鈍感な男性だったのです。

義弟のマコト君の同居は、夫のお母様が画策したに違いないと詩織さんは踏んでいました。
マコト君の母親(つまり詩織さんの義母)は、はじめマコト君を県人寮に入れようとしたみたいだけど、一人暮らしに憧れるマコト君がそれを嫌がったらしい。たしかに今時、県人寮なんて好んで入りたがる若者なんて少ないでしょうね。
でも、溺愛する末っ子が東京でいきなり一人暮らしを始めることが心配でたまらないお義母様は、折衷案として1年生のうちだけ、長男である昌明さんの家に居候させようと画策したに違いないのです。嫁である詩織さんからすれば、提案というより命令同然。また、夫の昌明さんは、長男なのに故郷(信州)には戻らずに東京で就職し、さらに詩織さんという東京育ちの嫁を貰って、都内に一戸建てまで構えてしまったことに、ある種の後ろめたさを覚えているみたいでした。だから母親の頼みには弱い。
『面倒くさいなあ…』
これが詩織さんの正直な気持ち。
同い年の夫と3歳になったばかりの一人息子の翔クンとの三人暮し。息子にはまだまだ手はかかるけれど、家族水入らずの暮らしは、じゅうぶん幸せと呼ぶにふさわしいものでした。そこに、詩織さんにとっては他人である義弟に闖入されることが、何やら気が重いのです。
詩織さんとマコト君は何度か顔を合わせていたけれど、詩織さんの受けた印象は、社交的な夫とは違ってシャイで晩稲な少年…って感じでした。
義母にとっては年を取ってからの末っ子ですし、昌明さんも12歳も年齢差のある弟を溺愛していて、『だからひ弱に育ったんじゃないの?』と、詩織さんは密かに疑ったりするのでした。
義理の弟、略して義弟。字で書くと硬いけれど、マコト君は、とても印象の薄い、目立たない男の子だったのです。
特に母親や昌明さんが、マコト君のことを『マコちゃん』と呼ぶのには、なんとも違和感を憶えた。
『アニメのヒロインじゃあるまいし、家族そろって箱入り息子に育てるつもり?』
つまり、詩織さんがマコト君に持っている印象は、あまり良いものではなかったのです。

かくいう詩織さんも、あまり社交的な方ではありません。
女子大を卒業して、お勤めしている時には、『真面目で面倒見がよく、仕事も出来てけっこう使える女』などという評価を得ていた詩織さんですが、実は人付き合いが苦手で、顔ではニコニコしていても、心の中ではいつも人間関係のストレスで疲れ果てていました。
だから、社会人生活3年目に学生時代から付き合っていた昌明さんからプロポーズされた時には、二つ返事でOK!それは昌明さんを心から愛していたというより、これで専業主婦の座にありつけて、とりあえず仕事を辞めることが出来ると考えたからです。
あっ!詩織さんが怠けものとかじゃありませんよ。逆に愛する家族のためならエンヤコラ!結婚当初から完璧な家事を心がけ、まさしく専業主婦を自分の天職と位置づけ、翔クンを出産した後は、子育てともども主婦業の完成に向かって邁進している女なのです。
だからこそ、詩織さんが築き上げた家族水入らずの生活を守りたい気持ちが強かったのかもしれませんね。
正直、義弟のマコト君との同居は疎ましかった。だいたい、マコト君も同居など望んでいないはずで、この折衷案はお義母さん以外、誰も幸せにしないのです。
『お義母様め!こうなったら仕方がないわ。こちらもあまり気を遣う事無く、軽い気持ちで接することにしよう。どうせ1年間だし…』
詩織さんはそう心に決めて、マコト君受け入れ準備に精を出すのでした。
(つづく)

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2011.11.01 Tue l My Lovely Little Brother l コメント (4) l top

コメント

No title
わ~い、懐かしい^^
この丁寧な語り口調がおかしいんですよね(笑)
ほのぼの読ませていただきます^^
2011.11.01 Tue l love-rs. URL l 編集
love-rsさんへ^^
ありがとうございます<(_ _)>
今回、登場人物の名前を変えてみました。
文体もどうしようか迷ったのですが、結局、オリジナル通りで書くことにしました。
そう言っていただいてホッとしています^^
2011.11.02 Wed l スマイルジャック. URL l 編集
義弟モノですか!
いいですね、義弟モノはダンナの目を盗んで関係を結ぶ背徳感がたまりません(^^)。
2011.11.02 Wed l 私の碇で沈みなさいっ!. URL l 編集
私の碇でさんへ^^
おっ!碇でさん、お久しぶり^^
カラリとした義弟モノを書いていきたいですね^^
2011.11.03 Thu l スマイルジャック. URL l 編集

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