エッチなおはなし
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My Lovely Little Brother 24
「実は、お母さんに頼み込んで、一人暮らしをさせてもらうことになったんです」
マコト君の言葉に、詩織さんは強い衝撃を受け、呼吸が止まる思いでした。
『それって…マコト君がこの家を出て行くって意味?』
「一人暮らしって…お前、1年生のうちはここにいるんじゃなかったのか?」
昌明さんも、いきなりのことに驚いています。
「うん…そう思ってたんだけど、やっぱり一人暮らしに憧れがあるって言うか…東京にもけっこう慣れてきたし、それに正直ここからだと大学に通うのに時間が掛かるから」
たしかにこの家からマコト君の大学までは、電車を乗り継いで1時間半ぐらいかかるのです。
「それで、長野の家からネットで調べて、学校の近くのアパートと仮契約したんだ」
「なんだ、もうそこまで話が進んでたのか」
「兄さん、ゴメン。せっかくお世話になってたのに。でも、どうしてもひとりで暮らしてみたいんだ」
「う~ん…」
一瞬の静寂。やがて、それまでただ静かに聞いていた詩織さんが、初めて会話に加わりました。
「昌明さん、やっぱりマコト君は男の子だし、独立したいのよ。お母様もご了承みたいだし、ここは送り出してあげましょうよ」
昌明さんが、詩織さんに視線を転じました。
「う、うん。お前がそう言うなら、いいけど…」
「兄さん、お姉さん、わがまま言ってすみません。このご恩は決して忘れませんから」
頭を下げるマコト君に、
「大げさなヤツだなあ。まあ、事情はわかった。おふくろも了承したなら仕方がない。たまにはうちにも帰って来いよ」
と、昌明さんは苦笑い。
「はい。美味しいお姉さんの手料理は食べたいですから」
こうして、急転直下、マコト君がこの家を出て一人暮らしを始めることに決まったのでした。
「お前とも、うまくいってると思ってたんだけど…」
マコト君との話を終えて夫婦の寝室に入り、昌明さんが心配そうに言いました。
「ええ、うまくいってたわよ。でも、彼も言ってたように、独立の心、止み難しだったのよ。あなただって学生時代、ずっとアパート暮らしだったじゃない」
「そうだな…あっ!もしかしてあいつ、彼女でも出来たか?」
「うふふ、そうかも知れないわね」
そんな会話を交わしながら、夫婦は別々のベッドに入ったのですが、詩織さんには、マコト君がこの家を出て行く本当の理由がわかるような気がしました。
マコト君は、自信が無かったのでしょう。同じ屋根の下で、詩織さんと暮らしていれば、いつか心のタガを失う時が来るかもしれない。
もしそうなって、歯止めを失ってしまえば、待っているものは家族の崩壊。
詩織さんは、兄である昌明さんの妻であり、二人の間には翔クンがいる。その現実の重さに耐えきれなくなり、結局身を引くことでしか、自分を、さらに詩織さん一家を守ることが出来ないと思ったに違いありません。
『あの子らしいわ』
隣に翔の寝息を聞きながら、詩織さんはそう考えました。
『助けられたのは私の方かもしれない。私だって、マコト君に負けないくらい彼にのめり込んでいたんだもの』
つらいだろうに、誰にも相談せずに決断したマコト君の心情を思って、密かに涙する詩織さんでした。
段取りのいいマコト君らしく、引っ越し準備は着々と進み、詩織さんの手伝う隙が無いほど。
数日後には、運送会社のトラックが来て、荷物のほとんどを運び出して行ったのでした。
マコト君はその間も、詩織さんたちと今まで通りに接し、詩織さんだって、あの日のことは、おクビにも出しません。
そして二人は示し合わせたように、家の中では決して二人っきりにならないよう、気を配っていたのです。
翔は、マコト君との別れがわかっているのか、いないのか…
たぶん、マコト君が里帰りした時と同じような感覚で、またすぐに会えると思っているようです。
(つづく)
2011.12.01 Thu
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My Lovely Little Brother
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コメント (4)
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コメント
ナンか…
手慣れた と云うか…
老練 と云うか…
イイ所まで引っ張っておいて、まとめ方が上手くなったねぇ… ???
2011.12.01 Thu l おじ. URL l
編集
おじさんへ^^
恐縮です(~_~;)
2日に1回しか書けなくなってしまった僕ですが、なんとか最後まで書き切りたいと思います(^o^)/
2011.12.01 Thu l スマイルジャック. URL l
編集
結局
マコト君にとって詩織さんの存在がいろんな意味で重すぎたんだろーなぁ。まぁ翔君には気の毒だろうが。
2011.12.04 Sun l 私の碇で沈みなさいっ!. URL l
編集
私の碇でさんへ^^
翔君、可哀想ですね。
小説なのに同情しちゃった^^;
マコト君には、そのうち彼女が出来るでしょうが。
2011.12.05 Mon l スマイルジャック. URL l
編集
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