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長野県松本市は私の両親のふるさとだ。
父と母は、このアルプスに囲まれた城下町で出会い、そして宿命的な恋に落ちて、やがて結ばれた。
結婚後、二人は東京で愛の巣を営み、やがて私という愛の結晶が生まれ、ひとり娘の私は両親のあふれんばかりの愛情を注がれながらすくすくと育ち、そして17歳になった。
悲しいことに両親は別々の道を歩むことになってしまったけれど、それもまた人生というものだろう。たとえ離婚してしまっても、両親が私にとってかけがえの無い大切な存在であることに変わりはない。
そして今、私は心の故郷、信州に降り立った。
愛するケンちゃんとしばらく会えないのは寂しいけれど、それでも私の心は震えている。
きっと私のDNAには、この街の匂いが染み付いているのだろう。安曇野の明るい真夏の太陽、木々を渡る爽やかな風、遥かなる南アルプス…ああ、わが心の故郷、松本よ…

「ゆきえ、さっきから、なに一人でぶつぶつ言ってんの?」
松本駅のコンコース、前を歩いていた奈緒が振り返り、不思議そうな視線をゆきえに浴びせ掛けた。
「えっ?私、なんか言ってた?」
「言ってたわよ。わが心のなんとかかんとか…もしかしてボケちゃった?」
「…」
(相変わらず奈緒ちゃんは口が悪い。せっかく詩心に浸っていたのに…)
ゆきえは照れ隠しもあって、先を歩く奈緒に向かって心の中で悪態をついた。
毎年夏休み恒例の信州への里帰り。今年は仕事を始めた母親がうまく休暇を取れなかったこともあり、ゆきえは親友の奈緒を誘って二人で帰省したのだった。
「暇だし、たまにはド田舎の空気でも吸ってみようかな。ゆきえのお守りをしながら」
相変わらずの上から目線に、奈緒を誘ったことをさっそく後悔してしまったゆきえだったが、実家に着けば主導権を取れると高をくくっていた。

ホントは恋人のケンちゃんと一緒に来たかったな。高校生だから無理か…でもケンちゃんを連れて帰ったらみんな驚くだろうな。ユリちゃんとか目を丸くして。おばさんは、『あれあれ、ゆきえちゃんが東京からお婿さん連れて帰って来たよ。ちょっと、あんた!』とか…いやだあ!お婿さんだなんて…エヘヘ

ゆきえが、ふとわれに帰ると、再び奈緒が立ち止まって、胡散臭げに、ゆきえを見ていた。
「あっ…」
「どうでもいいけど、駅を歩きながらニヤニヤするのやめてくれない…」
「…」
結局、ゆきえはムスッとしたまま奈緒の後をついて歩くことになる。
だいたい本来はゆきえが先導するべきなのに、奈緒がずんずん歩いて行ってしまうのだ。
ゆきえは仕方なく小走りで奈緒の後を追っ掛けた。
駅前ロータリーに、ゆきえの伯母の早苗と、いとこの友里恵がゆきえたちを待っていた。車で迎えに来てくれたのだ。
「ゆきえちゃ~ん!」
「ユリちゃ~ん!」
ゆきえと友里恵が、手を取り合って飛び跳ねて再会を喜びあったが、奈緒がうんざり顔で、
「再会祝福のダンスはそれぐらいにして、車に乗らない?ここ暑いんだけど」
と、水を差した。
「…誰?」
「ほ、ほら、電話で話した奈緒ちゃん。今回は一緒に遊びに来たの」
ゆきえが慌ててフォローする。
「ふ~ん…」
挨拶もそこそこに車に乗り込んでしまった奈緒に、早くもユリちゃんが不信の目で見ていた。
(あ~あ、やっぱり連れて来るんじゃなかった)
ゆきえは心の中でため息をついた。
(つづく)

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2011.12.12 Mon l ゆきえの冒険・高校生編 l コメント (2) l top

コメント

なんだか(^^;;
先が思いやられる様な雰囲気ですねぇ(笑)。
だから奈緒ちゃんを田舎なんかに連れてっちゃダメだとあれほど(以下略)。
さてさて奈緒とユリちゃんね絡みが楽しみだわ(変な意味じゃなくて)。
2011.12.12 Mon l 私の碇で沈みなさいっ!. URL l 編集
私の碇でさんへ^^
毎度おなじみのメンバーです^^;
奈緒ちゃん、さらに悪辣さが増しているような…
ユリちゃんがライバルになれるかどうかですね^^
2011.12.14 Wed l スマイルジャック. URL l 編集

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