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由美はうちで働くようになっても仕事が終われば毎日まっすぐに病院に向かったが、そのうち僕が車で送り届けるのが習慣となった。
由美は固辞したが僕が無理やりにでもそうしたかったのだ。
そのうち由美も父親のことをぽつぽつと話すようになった。
由美の父親は末期の肺癌で、半年もつかどうかと医師に宣告されていた。長年石工として、石を削って粉を吸った影響だろうと由美は言った。
母親は早いうちに亡くしていて、小学生の時から父一人娘一人で暮らして来たのだと言う。
そのうち僕も病室まで同行するようになり、由美の父親を恐縮させた。
若い頃はヤンチャだったという父親も、長患いで萎びたような印象だった。

帰りも車で由美を住まいである郊外の県営住宅まで送り届けるのが日課となり、そしてある日、小さく狭い由美の自宅に招き入れられ、そこで初めて肉体関係を持った。
その頃には僕はすでに、由美との結婚を考えていた。
と言うか、由美以外を妻にすることを考えられないまでになっていた。
由美の父親を見舞い、由美が席を外した時を見計らって由美の父に、『由美さんと結婚したい』と告げたが、すでに癌がリンパから脳に転移して惚けが始まっていた父親は、楽しそうにニコニコ笑うだけだった。

由美の父が亡くなった。
葬儀の手伝いをしたいと申し出たが、由美からは丁重に断られ、ごく身内だけのささやかな葬儀となった。
由美は葬儀後すぐに仕事に戻り、そして四十九日法要が終わった翌日、僕は由美にプロポーズした。
「どうして私なんでしょうか?」
由美は戸惑っていたが、僕は、
「君以外には考えられない!」
と、なかば哀願するようにまくし立て、由美は躊躇したあげく、ついに求婚を受け入れてくれた。
思えば僕と付き合い始めて由美は戸惑いの連続であったろうが、僕は由美を手に入れたことで有頂天だった。

案の定、母には強く反対されたものの、父が認めてくれたので最終的には渋々折れた。
結婚した時は僕が26歳、由美は22歳だったが、それからはあっという間に時が過ぎ去った。
翌年には早くも長女の薫が生まれ、その二年後には長男の正明誕生。そしてそれを見届けるように父が脳溢血で倒れ、意識を取り戻すことなく逝ってしまい、僕は30歳を前に会社を引き継ぐことになった。
社長就任は不安だらけだったが、父のコネクションは生きていたし、無借金経営を社是としていたこともあって頼りない僕でもなんとか舵取りが出来た。
母からは『古くからの従業員のためにもあんたが頑張らなくては』とハッパを掛けられ、僕は僕で経営が行き詰まることがあれば無理をせずに工場を畳んで、跡地に学生向けマンションでも建てればいいやと気楽に考えることにした。
幸い企業城下町の中でも古株のわが社は、巨大企業の重役からも目を掛けてもらっていたこともあり、厳しい経営環境の中、なんとか会社をやり繰りしてきた。
おとなしい妻が母にいびられるのではと心配したが、由美はなかなかに賢く、母とも時間を掛けていい関係を築いて行き、特に孫が出来て以降は、母はほとんどの家のことを由美に任せるまでになっていた。

そのように僕は十分に幸せだった。竹下たちからあの話を聞くまでは…
僕は酔った頭でそんなことをつらつら考えながら、いつの間にやら眠りに就いていた。
(つづく)
2010.04.23 Fri l 背徳エッチへのお誘い l コメント (4) トラックバック (0) l top

コメント

No title
由美さんに対する西崎さんの愛は献身的って言うくらい真っ直ぐな愛なのに。
昔話とはいえ、衝撃的な事実を耳にすると、西崎さんはショックですよねぇ・・・。
なんかカワイソス。v-409

でもきっと何がしかのリアクションを取るんでしょうねぇ~。
家庭崩壊にならなきゃ良いけど・・・。v-393
2010.04.23 Fri l 萌. URL l 編集
なんだか
西崎さん夫婦って本当に仲が良い夫婦なんですねぇ~。こーゆー人にとって竹下の言った事はショックだったんでしょうねぇ。

次回 背徳エッチへのお誘い 第7話 西崎は自分の知らない妻の顔を更に知る!。
2010.04.24 Sat l 私の碇で沈みなさいっ!. URL l 編集
萌ちゃんへ^^
西崎は由美さん一筋だったのです。
だからこそショックが大きい?
でもそれから数年、西崎さんにも余裕が出て来ているのかもしれません。
意外なリアクションになるかも・・・
2010.04.24 Sat l スマイルジャック. URL l 編集
私の碇でさんへ^^
西崎が心底、由美に惚れていることは疑いようもありません。
でも由美はどうか?
そこらへんが今作のポイントになりそうです。
2010.04.24 Sat l スマイルジャック. URL l 編集

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