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『ふん、スーパースターの私を欲しがるチームはいくらでもあるさ』
そう強がったものの、老舗チームすら持て余す札付きのわがまま娘を、あえて拾おうというチームも現れそうになかった。
『上等だよ!どのみち私にゃ日本は狭すぎるんだ。こうなりゃ海外に移籍してやる』
勝手に海外雄飛を画策するも、世界的な知名度もイマイチな日本人選手においそれと声が掛かるはずもなく…
海外事情に詳しいスポーツジャーナリストに聞いてみると、アプローチすれば受け入れてくれるヨーロッパのチームもあるだろうが、その場合、年収は今の5分の1程度になる覚悟が必要とのことだった。
『ご、5分の1って…フリーターじゃないっつーの!』
と、一人で怒っても誰が救いの手を差し伸べてくれるわけでもない。勝手気ままに生きてきたから人脈なんてありはしないのだ。
このままじゃ干上がってしまう。アルファ・ロメオのローンだって残っている。
八方塞がりの状況で、残された道がひとつしかないことは、祐実自身にもよくわかっていた。今までの所属チームに詫びを入れて復帰する。これしかないのだ。
さっそく行動を起こした祐実は、親会社の担当役員や監督の前で今までの不行状を詫び、心を入れ替えてバレーに打ち込むことを誓った。
もちろん心の中では悪態をついていたが、頭を下げながら涙さえ流して見せた。
手抜きのユミちゃん、一世一代の大芝居。
結局、男は女の涙に弱い(美人ならなおさらだ)。迫真の演技の甲斐があって、なんとか現状維持の年俸で再契約することが出来たのだった。
もちろん、もう一度スキャンダルを起こしたら、即座に契約を解除するとの条件付きだったが。

無事チームへの復帰が決まったものの、チームにはそれを快く思わない勢力もいた。ハッキリ言ってほとんどのチームメイトが祐実の傲慢さやスタンドプレーを嫌っていたのだ。
復帰後、初めての練習に出た時など、なんとも白けた雰囲気が漂ったものだ。
(ふざけんじゃないよ!調子のいい時には、ちやほやと近寄ってきたくせに!)
ユミちゃんの辞書に自業自得の文字は無い。ただ、人生初めてのピンチを乗り切ったことで、少しだけお利口さんになっていた。
チームメイトたちに無視されても、練習では積極的に声を出して、元気を前面に押し出すことにした。
どこのチームにも実力は大したことが無いのに、元気だけを取り柄にムードメーカーと呼ばれる選手がいる。祐実はそういう手合いを心底軽蔑していたが、あえてそれを真似ることにしたのだ。
練習にはかつて無いほど真面目に取り組み、苦手なウエイトトレーニングやゴキブリより嫌いなランニングでも積極的に汗を流した。
とにかくバレーで失った信頼を取り戻さなくてはならない。バレーボールはチームプレーだから、チームメイトの信頼なしでは試合でボールが回ってこないのだ。
そして得点を稼がなければ給料が上がらないことに遅らばせながら気が付いたユミちゃんだった。
(今に見てろよ。あともう少しガマンすれば、再び私がチームを仕切るようになる。そうなりゃ誰にも文句は言わせない)
何事にも自分が中心じゃないと気が済まない祐実らしい理論だが、事態は祐実自身思いもよらない方向へ動いた。
五輪後、長期に練習をサボっていたせいか、痛めていた腰はいつの間にか完治していた。
ウエイトトレーニングの成果で瞬発力とパワーが目に見えて上がり、スパイク決定率は飛躍的に上昇。走り込むことで試合の後半で息が上がることも無くなった。
スピードと勝負勘は増し、結局以前と同じように試合ではほとんど全てのチャンスボールが祐実に回されるようになり、チームは優勝を、祐実自身は得点王を争うまでになっていた。
(私って…やっぱりスゴい!)
(つづく)

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2010.11.16 Tue l 泣き虫エリナ l コメント (2) トラックバック (0) l top

コメント

なんだか
都合が悪くなると「海外に行く」って言いたがる手合いってどこにでもいますよねぇ。
それにしてもサボってた事がかえって調子が良くなったんだから祐美も運がいいよねぇ。
2010.11.17 Wed l 私の碇で沈みなさいっ!. URL l 編集
私の碇でさんへ^^
やはり祐実はバレーの天才なのです^^
人間的にも一回りも大きく演技も上手になりました^^;
早く主人公と激突させたい!
2010.11.17 Wed l スマイルジャック. URL l 編集

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