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「どうだ正樹?あの店は合格?」
「うん。大丈夫だと思う。一番年上に見える優二が先頭で、次が佑介、そして僕が最後。一気に入ろう!」
「…了解!」
顔は童顔でも、正樹が僕ら3人の中では長男格だ。正樹の素早い判断に、僕らは回れ右すると、優二を先頭にした1列縦隊で店のドアに向かって前進した。ドアの前まで来て、優二が客引きの男に、
「いいですか?」
と、声を掛けると、急に現れた僕らにちょっと驚いたように、『どうぞ』と、自動ドアの中に招き入れ、中にあった階段の上に向かって、
「3名様、ご案内!」
と、叫んだ。
ふ~っ!第1関門は突破だ。僕たちが赤いカーペットが敷き詰められた階段を緊張した足取りで昇って行くと、カウンターの前に立つ、パンチパーマに蝶ネクタイの男の姿が見えてきた。
男は小さな声で『いらっしゃいませ』と言いながらも、僕たちに戸惑った視線を投げかけた。やはり断られてしまうのだろうか?
男は『少々お待ちください』と言うと、カウンターに入り、奥のカーテンに頭を入れて、なにやらしゃべっていた。
やがてカーテンが少しだけ開き、痩せているけど目つきに凄味のある中年男が顔をのぞかせ、僕らの方に鋭い視線を投げてきたが、次の瞬間には興味無さげにパンチパーマの男に一つうなづいた。
いかにも責任者の許可が下りたって感じだ。受付の男は急に愛想笑いを浮かべ、
「いらっしゃいませ。入浴料は8,000円になります。ご指名は?」
と、聞いて来た。
「いえ…ありません」
優二が緊張した口調で答え、僕たちは慌てて財布を取り出し、お金を払う。
「中で女の子に18,000円を渡してください。これは優待券ですので、次回ご来店の際にご利用ください」
渡された名刺サイズの割引券には、『入浴料2,000円引き」と印刷してあった。…お得じゃないか。

やがて僕らは奥の待合室に通されたが、そこはソファーが並んだ病院の待合室みたいな感じで、大型の液晶テレビが朝の情報番組を映し出していた。
少し落ち着いて部屋の中を見回してみると、建物もソファーも年季物で古めかしく、テレビだけが新しかった。
先客が2人いたけど、僕たちには全く興味を示さずに、新聞や雑誌を読んでいる。
僕たちが横長のソファに並んで腰を下ろすと、これも蝶ネクタイをした、若くてガタイがよく、そしてガラの悪そうな男がおしぼりを持ってやってきた。
「お飲み物は何になさいますか?」
この手の男が僕たちに敬語を使うなんて、こういうシチュエーション以外にあり得ないだろうな。
僕たちはサービスメニューから、無料のコーラやウーロン茶をめいめいに注文し、とりあえず入店出来た安心感で、かえって落ち着きを失っていた。
「何とか入ることが出来たな」
「うん。でもこれからは一人だけで、それぞれ頑張るっきゃないよ」
長男格の正樹はこんな時でも僕らを気遣ってくれる。
寒い屋外から、暖房の効きすぎた待合室に座って、僕らの頭はちょっと、ボーっとなっていたと思う。とりあえず用意してきたお金で足りたことで、ホッともしていたし。
やがて、さっきのガラの悪い男が、トレーに乗せたドリンクを運んで来て、危なっかしい手つきでサイドテーブルに置き、そして小脇にはさんだ、A4サイズのクリアファイルを僕らに手渡した。
「今日、出勤している女の子たちです。この中からお選びください」
僕たちの前にかがんで、不自然な笑顔を浮かべていた男が去り、僕たちは急いで顔を寄せ合って、そのファイルをめくり始めた。
(つづく)

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2011.04.23 Sat l ソープ嬢ナナちゃん l コメント (2) l top

コメント

まぁねぇ
こういう店では童顔は不利になるからねぇ。
それにしても主人公たちのドキドキっぷりがなんとなくキモチわかりますね。
2011.04.23 Sat l 私の碇で沈みなさいっ!. URL l 編集
No title
いくつになっても、やっぱドキドキしますよね^^
また、あのドキドキを味わいたい!
2011.04.24 Sun l スマイルジャック. URL l 編集

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