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その時僕は、パーティー会場の片隅でうとうと居眠りしていた。
大手自動車メーカーが下請け企業を集めて主宰した謝恩パーティー。退屈な集まりだ。
立食パーティーのあと、場所をホテルのボウルルームに移しての二次会へと進んだが、その頃になると主宰メーカーの偉いさんたちは早々に帰ってしまい、下請け孫請けの中小企業のオヤジたちが、いぎたなくタダ酒を飲みクダを巻く。
「こんなパーティー開くぐらいなら納入価格を少しでも上げてもらいたいもんだ」
「本社は俺たち下請けを人間だなんて思ってないさ。たまにエサを撒いてやれば尻尾を振ると思ってやがる」
ヒソヒソ声ではあるが、会場のあちこちで怨嗟の声が上がる。
バブルの頃には本社の大盤振る舞いに大いに潤ったという中小下請けも、今じゃどこも青息吐息。ここ数年で随分と同業者も減ってしまった。
肝心の本社すら、いつ外資に呑み込まれるかという状況なのだ。
そんな声を聞くと、『まだうちの会社は恵まれているな』と感じる。
これも死んだ父親が残してくれた工場と人脈のおかげだろう。

「お前、いつまでも女ばっかり騙してんじゃないよ」
目を閉じたままの僕の耳に、遠山の陽気な声が聞こえてきた。
若い二代目経営者仲間で、本業より青年会議所の活動の方が忙しいパワフルな男だ。そのうち選挙にでも出るつもりなのかもしれない。
「いえいえ、うちの社長は女の方が放っとかないだけなんですよ」
この声は同席した資材屋の番頭格の根岸。肩書は営業部長だったっけ?と言ってもまだ20代の若造だが。
「おい根岸、変なこと言うな。遠山さんが信じちゃうじゃないか」
これはその資材屋の若社長竹下の声だ。こいつも二代目だか三代目だかで、番頭と同い年の20代と聞いた。
たまたま遠山たちと同席したのだが、先ほどから根岸が竹下の過去の女遍歴をまるで自分の自慢のようにしゃべり散らし、当の竹下はニヤニヤと聞いていた。こいつら二人はいつもこうなのだろうか。
ワイ談の類が大嫌いな僕は、途中で酔って寝た振りをしようとしたのだが、そのうち本当に眠ってしまっていたようだ。
(まだ続いていたのか)
舌打ちしたい気分の僕は、席を立つタイミングをはかっていた。
「君たち高校の同級生だって?どこの学校だっけ?」
「麻生商業ですよ」
番頭が答えると、遠山が、
「おお、麻商か!野球だけの名門校」
と受けて三人が笑った。
麻生商業…聞き覚えがあると思ったら妻の母校だった。
麻生商業高校は隣県(と言っても高速道路で20分ほどの距離)にある県立高校だが、遠山の言うように甲子園の常連校。
ただ学力などはたいしたことはないらしく、妻の由美と結婚したいと母親に告げた折り、高卒であることや商業高校出身であることに強く難色を示された苦い過去が一瞬思い出された。
「じゃあ麻商時代にも竹下社長はいろいろと女を泣かせたんだな?」
遠山がからかい半分に話を振ってやると番頭の根岸が待ってましたとばかりに、
「そりゃもう、華やかなもんすよ!」
と嬉しそうだ。
こいつは高校時代からこうやって社長の太鼓持ちをしていたのだろう。
「女子高生を泣かせてたのか?父親の敵だな」
「そんな、人聞きが悪いですよ遠山さん。自分の恋愛はいつもマジっす」
二枚目ぶって竹下が言い訳した。
「うらやましいねえ、そんなに若い頃から女子高生を食いまくって。どんな戦果があったんだ?」
遠山が懲りずに話を引き出そうとする。
「そうっすねえ。社長がモノにした女はいっぱいいたけど…取り巻きだった自分としたら、なんと言ってもユミちゃんが一番印象深いっすね」
「おお!ヤタベユミな。なんか懐かしいな」
番頭と若社長の竹下の会話にタヌキ寝入りを決め込んでいた僕が思わず目を開けた。
谷田部由美…結婚前の妻の名前だ。
(つづく)
2010.04.17 Sat l 背徳エッチへのお誘い l コメント (2) トラックバック (0) l top

コメント

今回は
なんとなく柳沢きみ○や国友やすゆき?っぽい感じですかねぇ?。
それにしても麻生商業って何となく九州方面にありそうな名前だねぇ(笑)。
なんか主人公がいろいろ調教するのが楽しみ。

主人公は妻の過去にまつわる話を聞いてしまう…

次回 背徳エッチへのお誘い 第2話 主人公はついに過去への扉を開く!
2010.04.17 Sat l 私の碇で沈みなさいっ!. URL l 編集
私の碇でさんへ^^
う~ん、その漫画家の作品はイマイチ読んでませんな^^;
麻生商業は、うちの近所の住所から付けました^^
おとなしい夫婦が徐々に変わっていく。
その過程をうまく書ければと思っていますので、飽きずに読んでやってください^^
2010.04.18 Sun l スマイルジャック. URL l 編集

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